関節水腫とは、膝関節内に過剰な滑液が溜まる状態を指します。膝関節の関節包内には、膝の動きを良くするための滑液に満たされています。「膝に水が溜まる」の「水」というのは、滑液のことをいいます。
症状
膝関節水腫は、主に膝の関節包が侵されます。関節包は2層構造になっており、すべての膝関節面を包んでいます。外側の層は、膝関節と脳などからの刺激を伝える役割を担っていますが、内側の層は、膝関節に栄養を供給する滑液を作り、衝撃吸収材のような働きをしています。
関節水腫の最初の兆候は、膝の激しい腫れです。同時に、可動性が著しく制限されます。膝の中の液体が大きな圧力となり、膝頭の後ろに痛みを感じることが多くなります。また、膝が赤くなり、熱く感じる場合は、膝に炎症が起きている可能性があります。
原因
膝関節の関節包内には、膝の動きを良くするための滑液に満たされています。
滑液は、少し粘度のある無色透明で、成分は主に、ヒアルロン酸とタンパク質です。関節軟骨は、血管がないので、この滑液から、栄養を補給しています。
その滑液は、関節包中の滑膜で作られ、軟骨に栄養を与え終わった滑液の老廃物は、毛細血管や、リンパ管を通って排出されます。このように、滑液は関節包内を代謝循環しています。
滑液の代謝は下記の順で行われます。
- 滑膜が滑液を産生
- 滑液が軟骨に栄養を与える
- 不要となった滑液は、毛細血管やリンパ管を通って排出
しかし、なんらかの原因で、軟骨などがぶつかり合って出た組織の破片が滑液に混じると、異物と察知するために、過剰に滑液が分泌されます。
また、過剰に分泌された滑液は、吸収が間に合わず、滑液の分泌量>滑液の吸収量となり、その結果、関節水症・関節水腫となります。
膝に水が溜まったら抜いた方がいい?
よく「膝の水を抜くとクセになる」ということが言われますが、クセになるというのは一部誤解があります。関節水腫は関節内の炎症等が原因です。
そのため、抜いた後も炎症が残っていれば再度水が溜まることになります。
水を抜くことのメリットは、膝関節の筋力低下を抑えることができることにあります。
デメリットとしては、膝の水を抜くことで、一時的にある程度痛みが緩和することがあるため、無理をしてしまうことで炎症を悪化してしまうことが挙げられます。
膝に水が溜まっていることで、身体内に起こることとして、膝関節の筋力低下(大腿四頭筋)があります。これは、「関節原生筋抑制Arthrogenic muscle inhibition」と呼ばれる反応です。筋肉を動かす神経の反応が抑制されることで、筋力低下が生じるものです。
この状態でトレーニングをしても膝関節自体が不安定なため悪化してしまうリスクがあります。そのため、膝関節の動きの制限が強い場合は、筋力低下を抑えるためにも水を抜くことは推奨されます。
一方で、水を抜くのは関節水腫の根本的な治療ではありません。一時的に症状が治ったからと言ってすぐに無理な生活を続けると、症状が悪化する場合があります。
また、安静でも炎症が治まらない場合は、治療として関節内注射や理学療法等が必要となります。
そのため、膝の腫れがある場合は、関節内に問題が生じている可能性がありますので、一度早めに受診されることをお勧めします。
膝に水が溜まっていないか自分で確認する方法
膝に溜まる水のセルフチェックのやり方
① まず膝を伸ばして床に座り、片方の手で膝の少し上を膝のお皿の方に向かって押さえます。
② 次に、もう片方の手でお皿の骨を軽く押します。
もし水が溜まっていれば、お皿の骨が浮くような感覚があります。
膝に水が溜まった場合、自分で治せる?
膝に水が溜まったかもしれないと気づくと、今すぐ何かしないと!と不安になる方も多いでしょう。ただ、良かれと思って行った対処が逆効果になってしまうこともあります。
例えば、温める or 冷やすという処置です。原因が膝のケガによるもので急性期であれば、冷やす処置が正解で温めるのは厳禁。逆に変形性膝関節症などの慢性疾患の場合、冷やすと痛みの症状なども悪化しかねないため、温めるのが正解です。ちなみに湿布は消炎鎮痛効果を得ることが目的なので、温湿布でも冷湿布でもさほど違いはありません。
マッサージも血流改善の効果は期待できますが、膝関節の炎症の原因になる疾患も様々あり、ケガなどの場合は正しくマッサージを行わないと損傷を悪化させる可能性も考えられます。自分で治そうとすると、さらに症状がひどくなる恐れもあるため、まずは病院を受診して水を抜き、原因に沿った治療法やセルフケア方法を医師に確認することをおすすめします。
膝の水を抜いた後の注意点
膝の水を抜くことで、腫れや重だるさの改善は図れます。ただし、根本的な原因である関節炎の治療を行わなければ痛みは改善されません。
一時的に楽にはなるかもしれませんが、炎症を起こしていれば膝の痛みも水たまりも再発します。
そして、膝の水を抜いた後に痛みが引かない事象には、もうひとつ考えられる理由があります。それは、感染です。処置を行ってから数時間は注射針を刺した痛みが残りますが、自然に消えていきます。しかし、何時間たっても痛みが残ったり発赤や熱を帯びたりした場合は、処置の際に体外の細菌に感染した疑いがあるため、病院を受診することをおすすめします。
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